2008.01.10 Thu
milbloggerさんのお別れ
50代でホームレスになり、60代で生活を立て直して、今は自分のアパートもあって食うには困らないけれど、貯金がないから引退はできそうもないよ、という矍鑠としたおじいちゃんだった。
君の職業は?と聞くので、ライターなんです、とこたえたら、僕も!!という陽気な言葉が帰ってきた。
僕は職業ライターではないけれど、60過ぎてから、文章を書くようになったのさ、って。
Before my time comes, I just want to leave a few words
僕の順番がくるまえに、一言二言書き残しておきたいんだ。
NYに住んでるとたまにこんな素敵な出会いがある。
このおじさんと話をしたことで、自分が文字にすることをもうちょっと真剣に、真摯に受け止めないといけないと思ったもんです(実行できているかは別として)。
なんでこんなことを思い出したかというと、人気の"milbloggers"(ミリタリー・ブロガーさんたち)の一人がイラクで亡くなって、最後のポストが発表されたから。
(選挙の報道に埋もれてほとんど報道されてないみたいだけど)。
彼は、自分が死んだときに備えて、最後のポストを友人に預けておいたのだそうだ。
自分の死を考えたときに、自分のなかにある感情を文章に残したいと思う気持ちはよくわかる。
自分が死ぬことがわかったとしたら、私だってきっと書きまくってしまうと思う。
そして、きっと自分の気持ちを忠実に表現しようと思ったら、文章が理路整然としているかどうかなんて、二の次になってしまう気がする。
このアンドリュー・オルムステッドさんの最後の文章は、とてもリアルで、ちょっとファニーで、すっごく悲しい。
あまりのリアルさと迫力に、不覚にも泣いてしまった。
英語の読める人はぜひ読んでください。
自分が幸せだったこととか、もうちょっと良い夫でいるべきだったとか、兵士になったのは自分の意思だったとか、兵士としての義務をどう考えているかとか、自分の死を政治に利用しないでほしいこととか、でもそれと同時に、戦争のコストをわかってほしい(そんな矛盾もまたリアル)、なんてことが書いてある。
そして、もっと生きられたらよかったけど、死んでしまうわけだから、自分の死を悲しむのではなく、自分が生きた事実を祝福してほしい、というメッセージが書いてある。
I'm dead, but if you're reading this, you're not, so take a moment to enjoy that happy fact.
僕は死んだ。でも、あなたがこれを読んでいるとしたら、生きているということだから、その幸せな事実をいっとき楽しんでほしい。
選挙の大騒ぎが幸いしてか、今のところこのポストが政治に利用されている兆しはないけれど、世界中の政治家に読んでほしいもんです。
こんな兵士をもった国は幸せだけど、これだけ忠実な兵士を死なせた罪の重さ、誰かわかってるんだろうか。
| 政治 | 08:37 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑
時間をかけて読んだよ。ほんとに率直な文章で、身がすくんだ...。「書く」という仕事を、新年にあたってもう一度見直しました。いや、このひとりを死なせた罪の重さ、すべてのアメリカ人に知ってほしいよ。アメリカではなにか反響は起こっていないの?
| ai | 2008/01/10 16:51 | URL | ≫ EDIT